王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

きっとランバートは、アリスをただの義妹とは思っていないのだろう。

そしてアリスも。


だけどそれはエリナの想像で、褐色の瞳を細めて愛おしそうな顔をするランバートを、ただ黙って見ていることしかできなかった。


(もしかしたら先輩も、本当に好きな人ができたら、こんな顔をしているのかもしれない)


ランバートを見ていて思うのは初恋の先輩のことで、ずっとエリナを縛り付けていたその重しも、キットに出会ってから嘘のように軽くなった。

今は、これまで出会った誰よりも好きになれる人がいる。

そのことは、苦しく痛々しいだけだったファースト・キスの思い出を、ほんの少しの切なさを含む淡い経験に変えたのだ。


ランバートが好むのは専らアリスかキットの話で、彼が本当はキットのことを嫌いなのか好きなのか、よくわからなくなった。


「まさか。ならば本当に、あの夜が初対面だったと言うのか? あの男の顔は初めて会う女に向けるものには見えなかったぞ」

「はあ……殿下は、ウィルフレッドさまから私の話をお聞きになっていたんです。だから本当に、あのときが初めてで……」


ランバートは、キットとエリナにはあの仮面舞踏会以前に面識があったのではないかと言うのだが、本当にあれが初対面だったのだ。
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