王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「そんなに緊張するな。取って食うわけではない」
そうは言われても、近付く足取りはぎこちなく、どうしてもカチコチになってしまう。
ランバートはそんなエリナに構うことなく、彼女が窓際に寄ると、もう一度夜の闇に包まれた中庭へ視線を落とした。
「あれは相当必死に探し回ったな」
くすくすと上機嫌に笑うので、エリナも倣って中庭を見下ろす。
暗い中庭は、本館の舞踏ホールからもれる明かりに照らされ、淡い月の光に満ちている。
ランバートの視線を追って庭を覗き込むと、広い中庭を息を切らして一心に駆ける男の姿が見えた。
「キット……」
辺りをキョロキョロと見回しながら走り、少しずつエリナのいる別館へ向かってくる。
本館の中も探し回ってから中庭へ出てきたのだろう。
「さあ、今夜のメインイベントだ。ヤツはどんな反応をするかな?」
ランバートはどこかウキウキした様子で腕組みをして、窓に寄りかかって右往左往するキットを見下ろしている。
しかし、エリナに触れようともしなければ、場所を変える素振りもない。
別館の中で明かりが灯っている部屋はほんのわずかだし、このままではキットがこの部屋へたどり着くのも時間の問題だというのに。