王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
(もしかして、この人……)
本気でエリナをどうこうしようとは、思っていないのではないだろうか。
彼の社交界での派手な噂を鑑みれば、それは甘い考えだと言わざるを得ないのに、実際目の前のランバートは指一本触れてこないのだ。
「あのぅ……」
だとすれば、ランバートは何を考えているのだろう。
知りたいような、知りたくないような。
真意を問いただそうと恐る恐る見上げると、ランバートは中庭から視線を外し、むずむずと何か言いたげなエリナを見てプッと吹き出した。
「勘違いするなよ、初めは本当にお前の身体を弄んで一晩中楽しませてもらうつもりだった。だが私の気が変わった、と言うより……」
ランバートの手が伸びてくる。
エリナが思わず身をすくめると、意外なほど優しく、指先だけを引っ掛けて顎をすくい上げた。
エリナのアーモンド型をした空色の双眸を覗き込む。
「お前が変わったのだ。舞踏会の夜のお前なら、確実に抱いていただろう。だが私には、気楽な男女の戯れの趣味こそあれど、他の男を想って泣きそうな顔をしている女を弄ぶ趣味はない」
穏やかなその表情に、エリナは思わず目を見張った。