王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「エリナ! そこにいるのか!?」
キットの声だ。
エリナはとっさにどうすることもできなくてピシリと固まり、ランバートは絶好のタイミングに嗜虐的な笑みを浮かべる。
ふたりはその態勢のまま指一本動かず、特に返事もしなかったが、そのほんの数秒にも焦れたようにキットが勢いよくドアを開けた。
「エリナ!」
ランバートに組み敷かれたまま、激しく肩を上下させて部屋に飛び込んできたキットの方へ顔を向ける。
エリナのドレスの胸元は破かれてはいなかったし、脱がされてもいなかったが、ランバートの指先がそこをさまよっていたせいで、キットの角度からでは弄られているように見えたのかもしれない。
キットの顔色は怒りでカッと赤くなり、それも通り越して青くなった。
「……んの野郎!」
キットは大股で一気にふたりの元へ駆け寄り、エリナに覆いかぶさるランバートを乱暴に引き剥がす。
「あっ、ち、違っ……!」
エリナは決して本気でランバートに襲われていたわけではないし、ランバートにその気もない。
こうしてキットを怒らせてその反応を楽しんでいるだけなのだと、すべてを説明したいのにそのどれも言葉にならない。