王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
(このままじゃ間に合わない……!)
エリナはドレスの裾をグッと掴んで持ち上げた。
「エリナ?」
キットがその様子を目の端に捉え、不審に思って声をかける。
「アリス! ラズベリーも屋敷も、なくなったって構いはしないから! だけどお前がいなくなったら、私は一日だって生きていられない!」
そう叫んだランバートがついに火の中に飛び込むより、一瞬早く。
キットが腕を掴むより、一瞬早く。
足の裏に力を込め、床を蹴り、炎の渦巻く部屋の中へエリナが勢い良く飛び込んだ。
肌を掠める炎が熱く、ドレスの裾を風が煽る。
放心状態で立ち尽くすアリスの腕を掴み、そのまま反動を付けて投げるようにランバートの方へ押しやった。
ランバートがその身体をしっかりと受け止めたのを視界の隅で捉え、振り返ることなく部屋の奥へ走る。
「バカ野郎!」
泣き叫ぶようなキットの声が背中に当たった。
目を開けているのも困難で、細めた視界でラズベリーがしまってある棚を探し、両開きの扉の取っ手に飛びついた。