王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

「あああっ!」


金属でできた取っ手は、焼け付くように熱く、喉から悲鳴がもれる。

手のひらが痛い。

喉を開けば苦しいし、身体の奥を焼かれているかのようだ。


それでも懸命に扉を開けようとするのに、それは開かなかった。


(ああ、鍵が……)


そうだ、ランバートはあのとき、ラズベリーを入れた戸棚に鍵をかけたではないか。

あの鍵は確か、侍女が持っている。


煙を吸いすぎたのか、意識が朦朧とする中、薄っすらとそんなことを思った。

頭上でバキバキと大きな音がして、この部屋もいよいよ崩れ始めるのかと思う。


(戻らなきゃ)


キットが泣きそうな顔をしている気がする。

それに自分は、キットの命を救うための小瓶を持っている。

どうして戸棚に鍵がかかっていることを、思い出せなかったんだろう。


思考だけがぐるぐると頭の中で忙しなく回り、身体は思うように動かない。

天井が崩れ落ちる音がする。


「瑛莉菜!」


意識が途絶えたからなのか、崩れ落ちる天井の下敷きになったからなのか、どちらかはわからないが視界が暗転する。

だけどエリナはそのとき、誰かに強く抱きしめられ、本当の名前で呼ばれたような気がした。
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