王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~



* * *



収穫祭に参加していた一般市民などは、積極的に消火活動に加わった。

負傷者はほとんどいなく、数人が避難の際に軽い怪我を負った程度だったのは、アリスが火を放つと同時に警備兵に火事を報せたからだ。


養女として侍女や兵士たちにも信頼の厚い彼女は、的確な指示を与え、皆その通り収穫祭の参加者たちの避難の誘導をした。

その場で誰かが火元を確認すればボヤ程度にもならなかったはずだが、アリスは人払いをした後、更に屋敷のほうにも火を付けていた。

そのときはアリスを疑おうなどという者はいなかったし、とにかく彼女の指示に従うのみだったのだ。


火はラズベリー畑の大部分と本館の一部を焼いたが、夜が耽る頃にはほぼ消し止められ、遠方から来ていた参加者たちは別館へ移って夜を明かすこととなった。



そして、長い夜が終わろうとするほんの少し前。

キットは目を覚ましたとき、まったく舌打ちをしたい気分だった。


エリナが泣いている。

その横にはなぜかランバートがいるし、ウィルフレッドとウェンディが心配そうな顔で覗き込んでいるのも見えた。

部屋の中には王宮で見るよく知った使者の姿もあるようだ。


「……ったく、泣き顔なんか他の男に見せんなよ」
< 260 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop