王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「あ、でもドレスとか……」
「大丈夫、明日のことは全部アメリアに頼んであるから。エリーはただ俺について来てくれればいいんだよ」
ウィルフレッドは、エリナの返答を聞く前から彼女を連れて行く気満々であったらしい。
器用で要領がよく、それでいてどうにも憎めないのがウィルフレッドという男である。
にこにこと無垢な少年のように微笑みながらも、ウィルフレッドのアンバーの瞳はときどきゴールドに光る。
エリナはそんな彼に多少呆れつつも、小さく笑って頷いた。
「わかりました。でも私、舞踏会なんて初心者ですよ。エスコート、よろしくお願いします」
「もちろん」
いきなりの舞踏会への誘いに驚いたエリナだったが、これは彼女にとっても好都合である。
邸で侍女をやっているだけではこの世界で起こることに大きく関わっていくことはできないし、上手くいけばウィルフレッドへの協力という名目で禁断の青い果実を手に入れることができるかもしれない。
(きっとなんとかなる。だってこれは、先生が書いてる小説の中での出来事だもん……)