王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~

実際、こっちの世界へやってきたその日に禁断の青い果実へたどり着くためのチャンスが巡ってきている。

不安が消えたわけではないし、本当は今すぐ泣き叫びたいほど心細い。


それでもエリナは、"なんとかなる"ということだけを言い聞かせて顔を上げた。

余計なことは考えない。

そうでないと、この世界にひとりぼっちだという不安と恐怖に押し潰されてしまいそうになるから。


「そんなに緊張するなよ。ただ隣にいて欲しいだけだから」


やけに表情の固いエリナがプレッシャーを感じていると思ったのか、ウィルフレッドは琥珀色の瞳を細めて立ち上がった。


そして彼女の側に立ち、その柔らかな黒髪に指を絡めた。

この暗い髪の色と空色の明るい瞳の組み合わせはエリナにぴったりだと、常々思っている。


「今夜はゆっくりおやすみ、エリー」


その手に黒髪を絡めたまま頬を包むウィルフレッドと目が合うと、彼はエリナを安心させるように優しく微笑む。


(ああ、これは、お兄ちゃんの顔……)
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