王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「付けなくていい。もう少し、きみのことを見ていたい」
ウェンディの頬がカアッと朱く染まり、大きな翡翠色の瞳が揺れるのを、男は満足気に見下ろす。
彼女が本気で嫌がってはいないことを確認すると、ウェンディの仮面を自分のジャケットの胸ポケットにしまいこんでしまった。
「で、でも……」
胸のドキドキが、近すぎる距離のせいなのか、男性の香りのせいなのか、じっと見つめられているせいなのか、ウェンディにはわからない。
視線を泳がせると小さく微笑む気配がして、掴まれたままだった手首を上の方に優しく引っ張られた。
男はウェンディの指先を、そっと自分の仮面に触れさせる。
そして低くて甘い声で、誘惑するように囁いた。
「……外してみる?」
見てみたい、とウェンディは思った。
このドキドキの正体を知りたい。
ひとり逃げ出した自分を見つけて、一緒に踊ると言ってくれるこの男は、どんな瞳の色をしているのだろう。