王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
男はウェンディの瞳が懇願に揺れるのを見ると、少し屈んで目を閉じた。
男からする薔薇の香りが鼻先で一層濃くなる。
柔らかな風がウェンディの顔の横に残った髪をさらりと撫で、それから男の栗色の巻き毛を躍らせた。
ウェンディの震える指先が不器用に仮面を外すのを、男は黙って待っている。
息を飲んで仮面をそっと離すと、高い鼻梁と扇型に広がったまつ毛が見えた。
小鳥が身体を震わせるように、長くて豊かなまつ毛が揺れる。
男の瞼がゆっくりと持ち上がり、一度瞬いてから、彼を間近で見つめるウェンディを探し当てた。
彼は、琥珀色の瞳をしていた。
「僕と、踊ってくれますか?」
その琥珀色の瞳が月の光を浴びていたずらっぽいゴールドに輝くのを見たとき、ウェンディはこの男をもっと知りたいと思った。
そして、どうか自分を見て欲しい。
舞踏会で出会った相手に対して心からそう思うことも、ダンスの誘いにこんなに胸が高鳴るのも、そして琥珀色の瞳が自分を探し当てた瞬間に走った甘い予感も。
すべてがはじめてであることに、ウェンディは気付いていた。