王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
「キャラがなあ、勝手に動いてくれれば楽チンなのに。あ、そうだ、宇野ちゃんちょっと小説ん中入っておもしろくしてきてくんない?」
「なにアホなこと言ってるんですか。ほら、とにかくもう一度設定から確認しましょう」
瑛莉菜は猫の首根っこを掴むように、弥生のくたびれたトレーナーの襟部分を掴んで引き上げた。
身体を起こした弥生は思案顔で、眉を寄せて何かを真剣に考え出したようだ。
小説の内容についてか、もしくは瑛莉菜を小説の中に送り込む方法についてか。
おそらく後者だろう。
瑛莉菜はもう一度深くため息をついてから、話を脱線させまくる弥生は放置して勝手に進めることにした。
この人が自分から話をするのを待っていたら、今夜は家に帰れそうもない。
「まず、ウィルフレッド・ランス公爵は国王に呼び出されて、皇太子と国のために"禁断の青い果実"を完成させるように言われますよね。そしてそのために伯爵令嬢であるウェンディに近付き……」
「それだ!!」
「ぅわ、な、なんですか……?」
さっきまで堕落しきって死んだ魚のような目をしていたくせに、突然ぱあっと表情を明るくさせた弥生は、叫び声と共に立ち上がってキッチンへとんで行った。