王太子殿下の溺愛遊戯~ロマンス小説にトリップしたら、たっぷり愛されました~
そしてその手に妙な壺を持って、ぴゅーんとテーブルまで戻り、椅子に座ったままの瑛莉菜の傍に立つ。
弥生は怪しむ瑛莉菜の前に、青くて歪な形をした壺をそっと置いた。
「宇野ちゃん、物語の中に出てくるその"禁断の青い果実"の材料を言ってごらん」
「はあ?」
瑛莉菜は片方の眉を器用に上げて、得意顔で隣に立つロマンス小説作家を見上げた。
あまりいい予感はしない。
それでもとりあえず弥生が動く気になってくれたのだからと、言われた通りにする。
「……はちみつと、ブルーローズと、それからラズベリー」
「うむ、正解!」
ほくほく顔の弥生がそう言って壺に被せてあったラップをとると、甘酸っぱく不思議に濃厚な香りが漂ってくる。
恐る恐る中を覗いてみると、空色に色付いたラズベリーのような実が見えたが、果たしてこれがラズベリーなのかはわからなかった。
なんせ、空色なのだから。
「あの〜、まさかとは思うんですけど……」
瑛莉菜が眉をひそめて苦い顔で壺から弥生へと視線を移すと、彼はうきうきと嬉しそうに笑う。