神様修行はじめます! 其の四
―― ゴオォッ! ゴオォォッ!
魔の海が震えた。
海の中から巨大ウツボがもう二匹、天に昇るような勢いで飛び出してきた。
「二匹!? まさか、こいつらも操られているのか!?」
浄火がウツボの姿を見上げながら大声で叫んだ。
信子長老は砂地にガクリと両膝をつき、四つん這いになって大きく肩で息をしている。
立ち上がる事もできず、汗まみれの顔は真っ青になってしまっていた。
いったい、どれほどの量の血液を異形に分け与えたんだろう。
きっと彼女の体も限界に近いはずだけれど、大きな両目はまだ光を失っていなかった。
睨みつけるような鋭い目付きで、震える指先をこちらへ向ける。
指示に忠実に反応したウツボ達が、左右から飛翔するように襲ってきた。
標的はあたしではなく、門川君に狙いを定めている。
当の門川君は、術発動の真っ最中。
慌てふためいている浄火の術は、とてもじゃないけど間に合わない。
瀕死の絹糸は意識不明。
絶体絶命の中、あたしの目は毒に侵され、緑の膜で覆われたように濁っている。
頭の中は、半ば夢の世界のようにボンヤリしていた。
あぁ、門川君が、危な・・・い・・・。
門川君、門川・・・く・・・。
く・・・・・・
・・・く・・・そおぉぉぉ・・・!
あたしは白い輝きの中に横たわりながら、半死半生の状態で歯を食いしばった。
内頬の肉を思い切り噛み、薄れる意識を強引に引っ張り戻す。
血の生ぐさい臭いが口の中に広がるのを感じて、少し目が冴えた。
・・・負けるなあたし! 門川君を、守るんだ!
それがあたしの役目でしょうが! こんな所で、のんきに腐りかけてる場合じゃないっての!