神様修行はじめます! 其の四

いつもなら、温泉に肩まで浸かったような極楽気分になるのに。


少し体が楽になっただけで、そこから体のダメージが全く回復してくれない。


なんで? こんなこと初めてだよ。


疑問に思うあたしの目に、門川君の表情が映った。


秀麗な美貌が、詳しい情報を読み取ろうとするようにあたしの様子を伺っている。


「効果がない、か?」


短い彼のひと言に、あたしはコクンとうなづいた。


ほんのひと言分の声を出すのも苦しくて辛い。


門川君の目付きが、いつにも増して表情を失い、逆に冷淡さを増していった。


いい加減、付き合いも長くなってきたあたしには分かる。


戦場で彼がいつも以上に冷静沈着になる。それは・・・


事態は悪化の一路をたどっている。 ってこと。


「術が・・・効かない、の・・・?」


息も切れ切れに確認するあたしに、彼は無言で答えた。


そっか・・・や、やっぱり、効かないんだ。


このウツボは未知の異形。門川君も見たことがない存在。


だから解毒方法が分からないんだ。


これは、ヤバイ。まじでヤバイ、かも・・・。


ピクリとも動かない絹糸は、毛並みの下から汚い緑色に染まった皮膚が透けて見えていた。


あたしの手の皮膚も、ミドリムシみたいなものがグニョグニョと増殖していく。


心臓、爆発しそう。呼吸はもう、秒針と競争するように早まっていた。


天井知らずに高まる熱で頭はガンガン痛むのに、意識がすぅっと遠のいていく。


痛い。痛い。脳みそ、破裂する・・・。


体、ダルイ。内部から腐敗していく。腐って、く。


門川君、あたし、腐って、溶けてしまうよぉ・・・。

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