神様修行はじめます! 其の四
全く力の入らない手で、それでもあたしは懸命に砂を握りしめる。
こ、この砂、ウツボが接近した瞬間に、投げつけてやる。
あの貧相な目玉の中に突っ込んで、目潰ししてやる!
来るなら来い! ウツボぉぉ・・・!
目にも止まらぬ素早さで、二匹のウツボが門川君の背後に迫る。
あたしは握った拳を、必死になってほんの数センチ持ち上げながらチャンスを待った。
さあ、来い。来てみろ。反撃してやる。
そしたら運良く、門川君じゃなくてあたしに注意が向くかもしれない。
どうかあたしを・・・あたしを狙って! ウツボ!
―― ・・・ゴオォォォッ!
その時、門川君の背後で強烈な突風が巻き起こった。
嵐のように大量の砂が巻き上げられ、目の前が砂のカーテンに閉ざされる。
頭上から雨のように降り注ぐ砂で一瞬、視界を完全に失って、その次の瞬間には・・・。
ウツボの姿が、忽然と消えていた。
・・・へ? な、何が、起こったの?
砂のカーテンの向こうで、何かの固まりが、ぶっ飛んで行ったような気がするけど・・・。
あまりにも一瞬の出来事で、何がなんだか良く分からない。
おいウツボ? あんたら戦闘中に急にどこ行っ・・・
「おわ!? なんだありゃ!?」
素っ頓狂な声を上げた浄火が、目を丸くして空を見上げている。
つられて見上げたあたしも、目を丸くした。
いつの間にあんな所まで移動したのか、遥か上空に、三つ巴で激しく絡み合うウツボがいた。
真っ青に輝く長いふたつの胴体と、もうひとつは・・・
透き通るようにキラキラ光り輝く、氷の龍! 門川君の召喚龍だ!
ウツボ二匹ごと、一瞬の力技で掻っ攫って行ったんだ!
「さてと、この間に手早く解毒を済ませてしまおうか」
背後状況なんか、一瞥もくれず。
門川君はまるきり淡々とした無表情で、平然とつぶやいた。