泣きたい夜には…~Hitomi~



「エピネフリン用意して!」


向井先生の子供だとか坂田教授の孫だからなんて関係ない。


目の前の消えてしまいそうな小さな命を救いたい。


もう無我夢中だった。


パパとママがあなたに会えるのを待っているよ。


元気になっておうちに帰ろうね。


「頑張れ!」


やるべきことは全てやった。


あとは赤ちゃんの生命力を信じるのみ。


分娩室にいる誰もが赤ちゃんの回復を願っていた。


「先生!皮膚に赤みが差してきました」


さっきまで紫色だった全身の色がピンク色になってきた。


「心拍上がっています」


開いていた小さな手がキュッと握られ、赤ちゃんは顔を歪ませて……


オギャー!


オギャー!


真っ赤な顔で元気な産声を上げた。


「サチュレーション(酸素飽和度:血液中に溶け込んでいる酸素の量)上がっています」


助産師が安堵の表情を見せた。



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