泣きたい夜には…~Hitomi~



身体をバタバタと動かして泣く赤ちゃんを見ているうちに涙腺が緩みそうになる。


グッと堪えて、


「向井さん」


向井先生の奥さんに声をかけると、不安の眼差しを向ける奥さんに、


「おめでとうございます。小さいけれど、女の子が生まれましたよ。向井さんも1日も早く赤ちゃんを抱っこできるように頑張って元気になりましょうね」


優しく声をかけると、奥さんは私の手を握って、


「先生、娘を助けてくださって、ありがとうございました」


大粒の涙を流していた。


ヤバい……


もらい泣きしちゃう。


「分娩室の前で向井先生が今か今かとジリジリしながらお待ちでしょうから呼んで来ますね」


目じりに滲んだ涙を拭うと、助産師に指示をし、逃げるように分娩室を後にした。



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