泣きたい夜には…~Hitomi~



ペロッと舌を出し、肩を竦めると、慎吾は呆気にとられた様子で、ただ一言、


「お疲れ」


優しく労ってくれた。


私は小さく頷いて、


「慎吾も向井に付き合わされて大変だったね」


そう言うと、慎吾は苦笑しながら車のドアロックを解除した。


マンションに着くまでの間、私達は言葉を交わすことはなかった。


しんと静まり返った車内は私達の未来を暗示するような重苦しい空気が漂っていた。


マンションに着くと、ガスを点け、カレーを温める。


慎吾は一旦自分の部屋に戻り、着替えてから私の部屋に来た。


昨日のカレーが残っていて良かった。


さすがの私も今日は作る元気がない。


「ごめ~ん!今日はカレーだけでカンベンして~!」


帰りにコンビニでサラダくらい買えば良かった、と後悔しても時すでに遅し……


申し訳ない気持ちでテーブルにカレーを置いた。


「いいよ、疲れているんだし、一晩寝かせたカレーは昨日のよりも美味いんだから十分さ」


慎吾は笑顔で言うと、食べ始めた。



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