泣きたい夜には…~Hitomi~



でも、重苦しい空気を払拭できぬまま、美味しいはずのカレーの味すらわからなかった。


いつもだったら、食事のこと、仕事のこと等、色々な話をして楽しいひとときなのに……


食事を終え、一緒に後片付けをしていても会話が続かなくて、洗い物をする水音だけがいつもより大きく聞こえた。


片付けが終わり、先にリビングで寛いでいる慎吾に、


「お疲れ様」


慎吾の前に缶ビールを置いた。


「サンキュ!って、お前は飲まないのか?」


慎吾の言葉に頷いて、


「向井の赤ちゃん、安定しているから大丈夫だと思うけれど、何かあったら呼び出しが来るかもしれないし、それに……」


言葉に詰まる。


「それに……?」


聞き返す慎吾。


「慎吾に話があるの」


「はいっ!!!!」


慎吾は、間髪入れずに挙手をした。


えっ……


「な、何!?」


思わず「はい慎吾くん!」なんて学校の先生みたいに指してしまいそうになったじゃないの。



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