泣きたい夜には…~Hitomi~
私の戸惑いを承知で慎吾は、
「その前に質問!」
小学生というよりも、国会の質疑応答のように鋭く切り込んでくるような気がした。
「向井先生の赤ちゃん、本当はかなり危険だったんだろ?なのに、何で自分は何もしなかったみたいな言い方をしたんだよ?」
あぁ、もうバレてる……。
思わず苦笑が漏れ、窓辺に目をやる。
「守秘義務があるからはっきり言えないけど、向井の赤ちゃん、かなり危険な状態だったの。でもね、必ず助けるって約束したから、とにかく無我夢中だった。
後でわかることなのかもしれないけど、さっきこのことを言ってしまったら、何だか恩着せがましい感じがして……言えなかった。ううん、言いたくなかった。
つまらないことなのかもしれないけど、私の医師としてのプライド……もう私は大丈夫なんだというところをあの人に見せたかった。ただそれだけのこと」
向井先生が別れてもなお私のことを気にかけていることはわかる。
だからこそ意地でも頑張って安心させたかったんだ。
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