泣きたい夜には…~Hitomi~



「桂川のこと、慎吾には帰国したら話すつもりだったけれど、私が桂川の娘だということは大学病院でも知っているのは上杉教授と一部の人間だけなの。向井だって知らないわ、浅倉姓のおかげでね」


そう言い、肩を竦めた。


車の中で談笑しているうちに2年という歳月の壁が徐々に崩れ、ぎこちなさがなくなっていった。


窓の外は私が大学卒業まで過ごした懐かしい街。


改めて日本に帰ってきたと実感する。


「着いたぞ」


駐車場に車を停め、お店の名前に、思わず胸が弾む。



「あ、ここのお店……懐かしい」


学生時代、何度も訪れた串焼き専門店だった。


確かここは日本酒の種類も多いし、焼き鳥も美味しかった。


別に普通の居酒屋でも良かったのに、いつもながら慎吾の優しい気遣いにますます惚れてしまう。



.
< 244 / 286 >

この作品をシェア

pagetop