Again
「夜まではいなーい。仁さんのご飯を作らないと」
「それもそうね」
恵美子はキッチンで手を洗い、人数分の皿を食器棚から取り出す。慣れたことだが、5人分の焼きそばをフライパンで一度に作るのは、無理だ。具だけ、麺だけと分けて炒める。
さらに、弟達はこれだけでは足らないのでご飯も一緒に食べる。成長期が終わりかけでも、食費は嵩む。
「お母さん、少し生活は楽になってる?」
「かなり違うわよ。お父さん、元から営業能力がある人だから、成績もよくて、少しだけど臨時ボーナスが出たのよ。お母さんも前みたいに週5でパートは行っていなくて、体も休めているわ。名波さんのお蔭……ううん、葵のお蔭ね」
「初めは正直、悲劇のヒロインぶっていたけど、仁さんはとても優しいし、生活は不自由していないし、とても幸せよ。お父さんもお母さんもそのことで自分達を責めないでね」
嘘ではない。
大量の焼きそばを分けるのに、重いフライパンを持ち上げ、鍋敷きに置く。お金の事が気になって自ら聞いてしまったが、やはり母親は未だに気にしていたようだった。
その、重荷を取らなくてはと、葵は幸せだと恵美子に言った。
「大事な一人娘だもの、幸せに暮らしてくれなくちゃ困るのよ」
恵美子はしんみりした顔をする。
「ありがと、お母さん」
「翔、楓を起こしてきなさい。もうお昼ご飯だって呼んできて」
「あ? うん」
翔は、のっそりと起き上がりながら返事をする。
テーブルに焼きそばの皿を並べ、箸を置く。
「あ、お父さんは?」
「今、自治会の集まりに行っているの。もしかしたらその後、集会所で飲むかもね」
団地に越してきて、社員として働き出した頃、階段役員の順番が回ってきた。気持ちにゆとりが出来た父、義孝は喜んで役員を引き受けた。それからと言うもの、団地の役員を通して友達も出来たようで、楽しく自治会に参加をしている。
「そう、それじゃあラップをしておいた方がいいね」
「おう、姉ちゃん」
翔が、髪が跳ねた状態で、ベランダから来る。
「楓、一体何時まで寝ているのよ」
腹に手を入れぼりぼりと掻き、頭はぼさぼさだ。この楓と翔は一卵性の双子で、贔屓目で見なくても、そこそこの好青年に見える。仁ほどの容姿と身長はないが、モテるのではないかと思う。今まで何人か二人それぞれ彼女もいたらしいが、一度も紹介していない。葵の見るところ、今、二人共、彼女と呼べる人はいない。
「昨日、バイトだったんだよ、お、焼きそばだ。いただきまーす」
二人とも、座るなり豪快に食べる。仁はとても品よく食べるために、箸で沢山、食べ物を掴み、大口でかき込む姿が微笑ましかった。
「あ、来月ね、仁さんとパリに行くの。仁さんが海外出張で行くから、一緒に行こうって。何か欲しい物があったら言ってね」
「それって、新婚旅行ね。仁さん、忙しい人だけれど、ちゃんと考えてくれていたのね」
「仕事の合間だから、ずっと一緒に行動が出来る訳じゃないけど、嬉しいよ」
「そうね、楽しんでらっしゃい」
「うん」
「はー食った、ごちそう」
「ごちそうさま」
葵と恵美子がまだ半分も食べ終わらないうちに弟達は食べ終わってしまった。
お昼ご飯も食べ終わり、恵美子とテレビを観ながら他愛ない話をしていると、もう夕方になっていた。
「さて、帰ろう」
「もう、こんな時間。やっぱりお父さん、集会所で飲んでいるわね」
「また暫く来られないけど、パリから帰ったら、お土産もってくるから。お父さんにそう言っておいて」
「分かったわ」
「じゃあね」
玄関で見送る恵美子に手を振り、葵は実家を後にした。
「それもそうね」
恵美子はキッチンで手を洗い、人数分の皿を食器棚から取り出す。慣れたことだが、5人分の焼きそばをフライパンで一度に作るのは、無理だ。具だけ、麺だけと分けて炒める。
さらに、弟達はこれだけでは足らないのでご飯も一緒に食べる。成長期が終わりかけでも、食費は嵩む。
「お母さん、少し生活は楽になってる?」
「かなり違うわよ。お父さん、元から営業能力がある人だから、成績もよくて、少しだけど臨時ボーナスが出たのよ。お母さんも前みたいに週5でパートは行っていなくて、体も休めているわ。名波さんのお蔭……ううん、葵のお蔭ね」
「初めは正直、悲劇のヒロインぶっていたけど、仁さんはとても優しいし、生活は不自由していないし、とても幸せよ。お父さんもお母さんもそのことで自分達を責めないでね」
嘘ではない。
大量の焼きそばを分けるのに、重いフライパンを持ち上げ、鍋敷きに置く。お金の事が気になって自ら聞いてしまったが、やはり母親は未だに気にしていたようだった。
その、重荷を取らなくてはと、葵は幸せだと恵美子に言った。
「大事な一人娘だもの、幸せに暮らしてくれなくちゃ困るのよ」
恵美子はしんみりした顔をする。
「ありがと、お母さん」
「翔、楓を起こしてきなさい。もうお昼ご飯だって呼んできて」
「あ? うん」
翔は、のっそりと起き上がりながら返事をする。
テーブルに焼きそばの皿を並べ、箸を置く。
「あ、お父さんは?」
「今、自治会の集まりに行っているの。もしかしたらその後、集会所で飲むかもね」
団地に越してきて、社員として働き出した頃、階段役員の順番が回ってきた。気持ちにゆとりが出来た父、義孝は喜んで役員を引き受けた。それからと言うもの、団地の役員を通して友達も出来たようで、楽しく自治会に参加をしている。
「そう、それじゃあラップをしておいた方がいいね」
「おう、姉ちゃん」
翔が、髪が跳ねた状態で、ベランダから来る。
「楓、一体何時まで寝ているのよ」
腹に手を入れぼりぼりと掻き、頭はぼさぼさだ。この楓と翔は一卵性の双子で、贔屓目で見なくても、そこそこの好青年に見える。仁ほどの容姿と身長はないが、モテるのではないかと思う。今まで何人か二人それぞれ彼女もいたらしいが、一度も紹介していない。葵の見るところ、今、二人共、彼女と呼べる人はいない。
「昨日、バイトだったんだよ、お、焼きそばだ。いただきまーす」
二人とも、座るなり豪快に食べる。仁はとても品よく食べるために、箸で沢山、食べ物を掴み、大口でかき込む姿が微笑ましかった。
「あ、来月ね、仁さんとパリに行くの。仁さんが海外出張で行くから、一緒に行こうって。何か欲しい物があったら言ってね」
「それって、新婚旅行ね。仁さん、忙しい人だけれど、ちゃんと考えてくれていたのね」
「仕事の合間だから、ずっと一緒に行動が出来る訳じゃないけど、嬉しいよ」
「そうね、楽しんでらっしゃい」
「うん」
「はー食った、ごちそう」
「ごちそうさま」
葵と恵美子がまだ半分も食べ終わらないうちに弟達は食べ終わってしまった。
お昼ご飯も食べ終わり、恵美子とテレビを観ながら他愛ない話をしていると、もう夕方になっていた。
「さて、帰ろう」
「もう、こんな時間。やっぱりお父さん、集会所で飲んでいるわね」
「また暫く来られないけど、パリから帰ったら、お土産もってくるから。お父さんにそう言っておいて」
「分かったわ」
「じゃあね」
玄関で見送る恵美子に手を振り、葵は実家を後にした。