sEcrEt lovEr
「…ねぇ、もう帰らない?」

どのくらい歩いたのだろう。

“大人のお店”が立ち並ぶ繁華街を高校生が歩いていることに引け目を感じて、思わず声をかける。

「じゃあ、ここ入る」

答えになっていない上にそこはクラブ…

「さすがに飲み屋さんはまずいよぉ」

「お酒は飲まないもん、飲みたい気分だけど」

悠耶はそれだけ言うとささっとお店に入る。

こんな時間に未成年がこんな店に入るなんて。

罪悪感を抱えながら、後を付いていく。

照明は薄暗く、奥のバーカウンターではバーテンダーらしき人がシェーカーを振っている。

お客は当然、大人ばかり。流れている曲に合わせてダンスを楽しむ人もいた。

「あの… 失礼ですが未成年の方のご入店は」

初めての空間で、キョロキョロ辺りを見回していると、お店の人が困った顔で声をかけてきた。

まずいと思った反面、救われたと安心する自分もいた。
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