社内恋愛なんて
「それじゃあ」


「ああ、温かくして寝ろよ」


 過保護な父親か、と突っ込みたくなる部長の言葉に頬が緩む。


ドアを閉めるも、車を出す気配がなかったので、私から先に動いた。


マンションに向けて歩き出す。


背中越しに部長の視線を感じた。


きっと、私が見えなくなるまで見届けるつもりなんだろう。


 振り返ることなく、歩く。


切なくて今にも涙が零れ落ちそうだった。


どうして私は、こんなにも臆病なんだろう。


ごめんなさい、部長。ごめんなさい。


 マンションのエントランスに入り、部長から見えない所で立ち止まっていると、ようやく車のエンジン音が聞こえてきた。


車が発車し、マンションを横切って帰っていくのを確認すると、せきを切ったように涙が溢れてきた。
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