社内恋愛なんて
 ここにこのままずっといるわけにもいかないので、部長から離れる。


部長の手は、名残惜しそうに私の指先を握りしめて、そしてゆっくりと放した。


「ああ、頑張りすぎるなよ」


 部長の優しい言葉に、愛されているのが伝わってくる。


なんだかくすぐったくて、ふふふと笑った。


「はい、部長も気を付けて」


「ああ、また明日」


「また明日」


 明日も部長に会えることが、とても嬉しかった。


社内恋愛最高! と叫びたかった。


あんなに社内恋愛だけはしないって決めてたのに。


現金な奴だと我ながら呆れる。


 お互い小さく手を振りながら、反対の方向に歩き出した。


まだ仕事が残っているけど、苦ではなかった。


むしろいくらでも仕事ができそうだった。


たっぷり充電されて、元気いっぱいだ。


恋って素晴らしい。
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