社内恋愛なんて
声に出さず、口元だけでおはようと言う誠一郎さん。


普通におはようと言ってもいい状況なのに、わざと声に出さないことによって特別感が出て、ちょっと嬉しい。


私も周りに気付かれないように、口元だけでおはようと返した。


こんな些細なやりとりだけで、胸がきゅっと締め付けられて零れそうになる笑みを我慢するくらい幸せな気持ちになる。


毎日会えて、嬉しいな。


デスクに座り、引き出しからチョコを一つ取って、口の中に放り込む。


幸せボケして緩んだ気持ちを引き締めるために、脳に栄養補給! さあ、仕事しよう。


新卒採用は、いよいよ最終面接で佳境に入っていた。


残っているのは優秀な人たちばかり。


すでに複数社から内定をもらっている子も沢山いる。


今まで選ぶ立場だったのが、選ばれる立場へと変わり、最終面接では大切なお客様をもてなすように最上階の応接室で面接を行っている。


瀬戸内さんら受付の人たちは、面接の際役員だけでなく学生にもアイスコーヒーを出してもらい、粗相がないよう一層気を引き締めるよう伝達している。


そんな中、事件が起きた。
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