むとうさん
むとうさんはお金儲け…稼業について語る時は普段から想像つかないほど饒舌だった。

ヤクザが稼業について話しているのにおかしな表現だと感じるかもしれないが、彼は本当に真剣で純粋に稼業に取り組んでいるのがよく伝わった、

私も夢中になってきいていると、二人とも喉がかわいて空になったグラスを片付け、頼んでないのにぽんぽんと店員はお酒を持ってくる。

多分ここはむとうさんの行きつけなのかもしれない。

頭の中がふわふわとして、少しのことでもリアクションがいつもより大きくなっているのを感じる。

「雨止んだみたいですね。」
外を見ると、皆傘を畳んでいる。

「そろそろ出るか。」

ほわーっとしたままお店を出た。ランクルの運転席には坊主の私より若そうなジャージの男が座っていた。

むとうさんは助手席でその男と喋ってるんだけど、私は後部座席で少しぐでっとしていた。

山下公園が見えて、海だーなんて思っていてハッとした。

私、今結構危なくない?

普通に身体の自由はきくとは言え、男二人だし、そもそもどこへ連れてかれるの?

混乱していると新港埠頭へついた。

へ?港?海に沈められるの?私なんかまずいことした??まさかでも…
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