毒舌紳士に攻略されて
必死に隠そうとしているの、バレバレだし。
それはきっと琴美には伝わってしまっているだろうと思うほど、滑稽に思えてならない。
バカみたい。普通に言えばいいだけなのにな。
「坂井君のせいで嫌がらせされて困っているから、どうにかして」って――。
少し前の私だったら、きっと迷いなく本人を目の前にして言えたと思う。
「迷惑でしかないから」って。
でもそれが今の私には言えそうにない。
なにか言い返されるのが怖い。どんな反応をされるのかが怖い。……冷たくされるのが酷く怖くて堪らない。
坂井君の優しさを知ってしまったからかもしれない。
だからこんなにも臆病になってしまったんだ。
それと、確かに私の中で坂井君という存在価値が変わってきているからだ――……。
「めぐみ、ごめん。もうひとつ下げ忘れていた」
「大丈夫だよ、まだ全部洗い終えていないから」
会議室に設置されている流し台で大量カップを洗っていると、琴美が申し訳なさそうに下げ忘れたカップを運んできた。
それはきっと琴美には伝わってしまっているだろうと思うほど、滑稽に思えてならない。
バカみたい。普通に言えばいいだけなのにな。
「坂井君のせいで嫌がらせされて困っているから、どうにかして」って――。
少し前の私だったら、きっと迷いなく本人を目の前にして言えたと思う。
「迷惑でしかないから」って。
でもそれが今の私には言えそうにない。
なにか言い返されるのが怖い。どんな反応をされるのかが怖い。……冷たくされるのが酷く怖くて堪らない。
坂井君の優しさを知ってしまったからかもしれない。
だからこんなにも臆病になってしまったんだ。
それと、確かに私の中で坂井君という存在価値が変わってきているからだ――……。
「めぐみ、ごめん。もうひとつ下げ忘れていた」
「大丈夫だよ、まだ全部洗い終えていないから」
会議室に設置されている流し台で大量カップを洗っていると、琴美が申し訳なさそうに下げ忘れたカップを運んできた。