毒舌紳士に攻略されて
「そんなの当たり前じゃない。そうしたら今のような陰口もなくなるじゃない」

当たり前な話をしているというのに、なぜか琴美は不服そうに表情を歪めた。

「違う違う！私が言いたいのは、このまま坂井との関係が噂のまま終わっていいのかって言いたいの！」

「……なによ、それ」

口ではそんな強がりを言っているものの、内心動揺させられてしまい、歩くスピードは自然と落ちていった。

「もちろんさっきみたいに嫌がらせのことを、坂井に言えっていいたいわけじゃないよ。……ただ、めぐみの中で少しでも気持ちの変化があったのなら、もう少し頑張って欲しいなって思ったの。だって恋愛ってそういうものじゃない」

琴美の言う通りだ。恋愛なんて落ち込むことがあったり、嬉しいことがあったりで山あり谷ありなものだ。
たった一度勇気を出したくらいでへこたれていたら、まともな恋愛など出来ないと思う。でも――……。

「そうかもしれないけど……でも今はいいや。ちょっと自分の気持ちともちゃんと向き合いたいしね」

今までの私から見たら、そもそも自分から坂井君にメールを送っただけで立派だと思う。
< 165 / 387 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop