毒舌紳士に攻略されて
複雑な気持ちが込み上がる。
それでもふたりの会話が気になって、耳をそっと傾けた。

「だけどあの時の俺、迫真の演技だったと思わねぇ?みんな完全に演技だって気付いていなかったよな?」

あの時……?演技……?

そういえばさっきも高橋君、『俺のおかげ』とか言っていたよね?

次々と出てくる言葉達を必死に頭の中で整理する。

「佐藤なんて泣きそうになっていたし。マジで俳優になれるかも」

その言葉に思い浮かぶのは、先月の同期会での出来事。

ちょっと待って。
さっきから言っていることって……。

急激に胸が高鳴り出す。
もう頭の中ではふたりがなんの話をしているか分かっているのに、心がそれを認めてくれない。
だってそんなの、信じたくない。……嘘だよね?
高橋くんが一方的に話しているだけだし、冗談なんだよね?

最後の頼みの綱である、坂井君の言葉を高鳴る胸を押さえながら待つ。
けれど無情にも坂井君からは、信じられない言葉が飛び出した。
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