毒舌紳士に攻略されて
「バカ言え。あれはやりすぎだっつーの!調子に乗り過ぎだよ」

嘘……。

今まで私の中で積み上げられてきた坂井君が、音を立てて次々と崩れていく。

毒舌だけど紳士的で、曲がったことが大嫌い。
だからあの時だって助けてくれたと思っていた。……でも違ったの?

「なに言ってるんだよ。坂井だって俺に水をかけることねぇだろ?あれこそやりすぎだよ」

「仕方ねぇじゃん。高橋が調子に乗り過ぎたんだから。あそこまでしないと事が収まらないだろ?」

信じられない。信じたくない。

わざとだったの?
高橋君にわざとみんなの前で私に罵声を浴びさせたの?

あの時の記憶が蘇る。

すごく嫌な思いをした。
同期のみんなの前で罵られてバカにされて。惨めで悲しくて、苦しかった。
そんな私を救ってくれたのは、坂井君だと思っていた。
だけど違ったの?そんな気持ちにさせたのは、全部坂井君だったの?

いつの間にか涙が溢れ、頬を伝っていく。
そして頬を伝った涙は床へ落ちていくというのに、涙を拭う気にもなれなかった。
< 254 / 387 >

この作品をシェア

pagetop