毒舌紳士に攻略されて
“好き”って気持ちのダムが決壊し流れ出るように、次から次へと――……。

ふたりの笑い声さえも、どこか遠くに聞こえる。

あの日からずっと恋愛が出来ずにいた。
トラウマに囚われたままだった。
それでも琴美と坂井君のおかげで、トラウマとさよならできたと思っていた。
そして新しい恋愛を始められたと思っていたのに――……。

また同じことの繰り返しなのかな?
私はまた勝手にひとりで恋愛していたのかな?

頭の中も心の中も、色々な感情でぐちゃぐちゃだ。
どうしたらいいのか分からない。

ここで乗り込んでいって、文句言ったり坂井君のこと、責め立てることができたらいいのに、な。
今の私には、そんな気力さえ残っていないよ。

あの時と同じだ。
悲しくて苦しくて、辛い。
胸がはち切れそうだよ――。

あまりにも悲しくて、思わず声を上げてしまいそうになり慌てて口元を押さえる。

早くこんなところから逃げ出せばいいのに、胸が苦しくて動くことも出来ない。

どれくらいの時間が過ぎただろうか。
空き缶をゴミ箱に入れる音が急に響いたと同時に、坂井君の声が聞こえてきた。

「やべ、そろそろ行かないと」

その言葉にハッと我に返り、慌てて涙を拭う。
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