毒舌紳士に攻略されて
だけど坂井君は、一向になにも言ってこない。

社員達はほとんど退社してしまったようで、シンと静まり返っている。

なにも言ってこないくせに、どうして追い掛けてくるのだろう。
まずいと思った?言い訳が思いつかない?
謝りもしてくれないの?

そう思うと、感情が高ぶってきてしまった。

「離して」

ヤバイ。また涙が溢れてしまいそうだ。

これ以上坂井君と一緒にいたくなんてない。
だから離してほしいのに、さらに強く腕を掴まれてしまった。

「無理。だって離したら佐藤は逃げるだろう?」

「っ当たり前だよっ」

感情に任せて振り返れば、酷く傷ついた表情をした坂井君を視界が捉える。

「……っ!」

どうしてそんな顔をしているの?
傷ついているのはこっちの方なのに。

なにも言わない坂井君に、ますます感情は高ぶっていく。

「お願いだから離して」

これ以上一緒にいたら、酷いことを言ってしまいそうだ。
それなのに坂井君は、また感情を高ぶらせるようなことを言ってきた。




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