毒舌紳士に攻略されて
「どうして俺を責めないんだ?……それだけのことをしたのに」

「なに……それ」

カッとなる。
信じられない。どうしてそんなこと言うの?責めて欲しいの?

高ぶった感情は決壊したダムから流れる水のように、言葉となって溢れてしまった。

「逆に聞きたいよ!どうして責めて欲しいの?責めたら私が満足するとでも思っているの?」

「そういうわけじゃっ……」

「じゃあどうして?……そもそもどうしてあんなことしたの?あの時、坂井君が助けてくれて嬉しかったのに」

本当に嬉しかった。
ううん、嬉しかったのはこれだけじゃない。

「実家に連れていってくれた時だって、石川君のことだって全部嬉しかった!……だけどあれも全部嘘だったの?」

「ちがっ……!……違う。嘘なんかじゃない」

否定するように強く腕を握られるものの、信じることなんてできない。返ってますます疑問を抱いてしまう。

「石川君と同じようなことをしておいて、よく石川君のこと殴れたよね」

「……っ!」

こんなこと言いたくないのに、止まらない。
坂井君の表情が変わったというのに、止めることができないよ――……。
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