毒舌紳士に攻略されて
どれくらいの時間、中庭で泣いてしまっていただろうか。
気付いた頃には掲示板の方からは歓声など聞こえなくなっていた。
中庭にある時計で時間を確認すると、あれからだいぶ時間が過ぎてしまっていたようだ。

そろそろいい加減連絡いれないと。

鼻を啜りながら涙を拭おうとした時。

「あの、よかったらどうぞ」

「え?」

遠慮がちな声と共に目の前に差し出されたのは、ピンクの可愛らしいハンカチだった。
ハンカチからゆっくりと元を辿っていけば、たどり着いた先には困ったように微笑みながら、ハンカチを差し出す女の姿があった。

ここの高校の制服を着ていないし、どう見ても俺と同じ受験生だったのだろう。……それに俺と同じで不合格だったのだろうか?
目元が腫れている。明らかに泣いた後だ。

突然現れた女に視線は釘づけになり、冷静に分析してしまっているとそれがまずかったのか、女は差し出したままの手を引っ込めた。

「すみません、いきなりキモイですよね。ごめんなさい」

「え……?あっ、いや」

やべ。絶対これ勘違いしているよな?
< 296 / 387 >

この作品をシェア

pagetop