毒舌紳士に攻略されて
俺はただ突然現れて驚いていただけだ。
でも目の前にいる女はそう解釈していないだろう?
きっとこう思っているはずだ。
余計なお世話だった、とかまずいことをした、とか。
そんなことないのに――……。

「すみませんでした」

再度申し訳なさそうに頭を下げ、去っていこうとした瞬間、身体は勝手に動いてしまった。

「待って!違うんだ!」

酷く傷ついた顔をしていたからだろうか?
咄嗟に女の腕を掴み、引き止めてしまった。

「……あの?」

俺の行動が予想外だったのか、女は酷く驚き困っているようにも見える。

「いやっ、その……!」

つーか俺、なにやっているんだ?
別に誰もハンカチを貸してくれって言ったわけではないし、この女が勝手に差し出してきて、そして勝手に勘違いしただけの話なのに。
第一こんな女に勘違いされたままでも、俺の人生で特に困ることなんてないし。
それにきっともう二度と会うことなんてないはず。……なのにどうしてだろうか。誤解されたままにさせたくないって思ってしまったのは。
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