毒舌紳士に攻略されて
自分が弱っていたからか?初めて悔しい思いをしたからだろうか?

自分自身のことなのに、さっきから自問自答を繰り返してばかり。
そんな俺を見て、女はますます困ったように表情を歪ませる。

「あの、すみませんでした。本当、余計なことしてしまって」

そしてまた更に勘違いさせてしまったようだ。

「いや、違うんだ!そんなことないから」

「――え?」

どうしてこの女の腕を掴んでしまったのか、とか理由なんてもうどうでもいいや。
とにかく今は誤解させたままにしたくない。

「その……まさかここに俺以外の人がいるとは思わなかったから、びっくりして……」

それにハンカチを出してくれたってことは、俺が泣いているところも見ていたんだろう?
やべーな。それ、かなり恥ずかしすぎる。

女の顔をまともに見ることができなくなっていき、自然と視線を下へと向かっていく。

「だから別に迷惑とか、余計なこととかそんなこと思っていなかったから」

冷静に考えてみると、なかなか出来ないことだよな。
見ず知らずの泣いている男にハンカチを差し出すとか。俺だったら無理だわ。
いくら目の前で知らない女が泣いていたとしても、ハンカチを差し出す勇気なんてない。素通りしちまうと思う。
< 298 / 387 >

この作品をシェア

pagetop