毒舌紳士に攻略されて
第一俺だってまだ見てねぇんだから。

「着替えてくる」

「ケチ!」

大人げない言葉に足が止まるものの、ここでまた言い返したりでもしたら面倒なことになるのは目に見えている。
どうぜ『親父にそっくり』とか言うんだろう?
大きく息を漏らし、そのまま二階へと上がっていくと母ちゃんはまた大人げなく「ケチ」と言ってきた。

よく二十三歳になる息子にそんなことを言えたものだ。

部屋に入り着替えを済ませると、どっと疲れが押し寄せてきた。
ソファーに座り一息つくも、気になるのはめぐみがくれたチョコレート。

せっかく座ったものの、もう一度腰を上げ机にそっと置いた紙袋を取りにいく。

十五歳の時めぐみと出会った時から、毎年この時期になると想像してしまっていた。
めぐみは誰かに渡したのだろうか、と。

なのに今年はバレンタインというイベントを、すっかり忘れてしまっていた。
めぐみと付き合えるようになっただけで、浮かれていたんだよな、俺。
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