毒舌紳士に攻略されて
分からないから聞いているというのに、これじゃただの聞き損だ。

呑気にケーキを頬張る親父を見ながら珈琲を飲もうとした時。

「みっちゃーん!今すぐ出かけましょう!!」

玄関からバタバタと足音を立てて戻ってきたかと思えば、まだ食べている途中だというのに、親父の腕を無理矢理引っ張り立たせた。

「は?なに言ってるんだよ。第一こんな時間にどこに出掛けるっつーんだよ」

「いいから!」

有無を言わさぬ母ちゃんに、さすがの親父も押し黙る。

別に二人でどこに出掛けようが俺には関係のない話だけど、さすがに今の時間から急に出掛けると言い出した母ちゃんはおかしい。

「別に明日でもいいんじゃねぇの?」

抵抗する親父を必死に引っ張る母ちゃんに言うものの、聞く耳持たず状態だ。
俺が明日も仕事のように、親父だって明日も仕事だ。
同じく働く身としては、この時間に付き合わされるのは辛い。
そう思い母ちゃんを止めようと立ち上がったものの、ある人物が視界を掠めた瞬間、言葉を失ってしまう。
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