毒舌紳士に攻略されて
目を疑った。
だってそこにいたのは、気まずそうに様子を窺うめぐみだったのだから。

「あっ、あの……!本当、遅い時間なのですぐ失礼しますから」

母ちゃんと親父のやり取りを見てか、申し訳なさそうに謝る姿に、さすがの親父も言葉を失うものの、すぐに手にしていたフォークを置き咳払いをした。

「木苺、出掛けるか」

「でしょ?せっかくのバレンタインだし遠出しましょ」

「そうだな」

バレバレの演技をしながら支度を始める二人を、唖然としたまま見つめる。

いや、その前にどうしてここにめぐみが?

そのことで頭がいっぱいになっていると、いつの間にか支度を終えたのか、親父と母ちゃんは「今夜は帰らないかもしれないから」などと意味深な言葉を残し、本当に出かけて行ってしまった。

さっきまでは騒がしかったというのに、二人がいなくなった途端、シンと静まり返る我が家。

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