毒舌紳士に攻略されて
そもそもデート自体おかしい。本当だったら断りたいところだったけれど、それを坂井君は許してくれなかった。
断り続けていると、だんだんと不機嫌になっていき最後には腕を掴まれ、「デートするまで帰さない」って脅しをかけてきたし。

そんな脅しをされたら、「はい」と返事をするしかなくなってしまった。

でもよくよく考えてみれば、仕事帰りに一緒に店の下見に行った時とは違い、完全オフのプライベートで会うのだからそれなりのファッションで行かなくちゃだよね。

「そうだな、デートって言っても行き先とか全く分からないんだよね?」

「うん。ただ十一時からなって言われただけ」

行き先など聞かされていない。

「うーん……そうだなぁ」

そう言うと琴美は立ち上がり、タンスの中を物色し始めた。

「デートと言っても行き先が分からない以上、安易にデートの定番スカート系は避けるべきよね」

「なっ、なるほど」

タンスの方へと向かい、琴美の話に頷く。

だって私、よくよく考えればデートなんて中学時代付き合っていた人としたっきりで、どういうのを着たらいいのかとかよく分からない。
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