「幽霊なんて怖くないッ!!」
「ユキさんッ!!」
──カゲロウとユキさんの手と手が触れ合い、そして……。
「雪が居れば、俺の勝ちだ」
……薄暮さんにやられただろう口元の血を拭ったカゲロウは、ユキさんの体を抱えながら後方の木へとジャンプした。
その直後。
カゲロウの更に後方から、どす黒い いくつもの塊が飛んできた。
……カゲロウに支配された幽霊……犠牲になった人たちの魂……。
「もうココには用は無い。 お前たちがソレを相手にしている間に、俺は遠くへと消えるよ」
……一つ一つの塊の力は弱い。 けれどその数は100を優に越えている。
ソレをすべて相手にしていたら、こちらの力が先に無くなってしまう……。
「薄暮。 お前は当然『カゲロウの血』を守るのだろう?
彼女が死ねば俺は更なる力を手に入れる。 そうなれば世界は終わるぞ?」
カゲロウがそう言い切るかどうかの前に、薄暮さんは私たちに合流して拳を構えた。
……私のせい。
『カゲロウの血』である私がココに居るせいで、カゲロウが逃げてしまう。
これじゃあ、300年前と同じ……薄暮さんがオサキを助けた時と、同じことに……。
「陽炎、待って……!! お願い、もうっ……もうあの人たちを傷つけるのをやめてっ……!!」
「……雪は何も心配しなくていい。 俺の隣に居ればいいんだ」
「……私はっ、誰かの命を犠牲にしてまで生きたくはないっ……!!」
涙でグシャグシャになった顔で、ユキさんは必死に訴える。
けれど、その思いがカゲロウに届くことは無かった。
「……全部お前のためなんだ。 だから少し黙っていてくれ」
「……っ……」
「すまない」
……腕の中で暴れるユキさんの腹部に、カゲロウは迷うことなく拳をぶつけた。
当然 手加減はされているだろうけど、ユキさんの意識を奪うには十分な強さ……。
ぐったりとしたユキさんを抱えなおしたカゲロウは、私の隣に立つ薄暮さんを見て微笑んだ。