「幽霊なんて怖くないッ!!」
「こんにちは、八峠くん。 突然来てしまってすまないね。 今、大丈夫かい?」
「あぁどうもっ。 どうぞ入ってくださいっ」
少しだけ開いたドアから顔を出したのは、秋の親父さんだ。
どこか申し訳なさそうな顔をしながらも、中へと招き入れると笑顔を見せた。
「神社の仕事は大丈夫なんですか?」
「うん。 忙しい時期じゃないから、ちょっとだけ抜けてきたんだ」
「そうですか。 それで、今日はどうしました?」
おじさんは宮司を務めているため 神社に居る時は袴姿だけれど、今はその辺のおじさんと変わらない普通の服だ。
そのおじさんの手には、大きな紙袋が2つある。
「えーとね、うん。 とりあえず これは女房からね。 近所のお菓子屋さんで買ったクッキーなんだけど、まだそういうのは食べちゃダメだったかな?」
「あぁー、少しなら平気ですよ。 ありがとうございます」
「そうか、よかったよかった。 あぁでも無理に食べなくてもいいからね? 胃がビックリして血を吐いたら大変だ」
「大丈夫ですよ。 わざわざすみません」
1つ目の紙袋を受け取り、ベッドに備え付けてあるテーブルの上に置く。
……秋が死んだあと、親父さんもお袋さんもずいぶん元気を無くしていたけれど、近頃は少しずつ元のように明るくなってきた。 と、杏から聞いていた。
杏の言葉の通り、おじさんは昔と変わらない柔らかな笑みを見せている。
「あ、どうぞ座ってくださいっ。 お茶でいいですか? ペットボトルのやつですけど」
「あぁすまないね、いただくよ。 もうすぐ退院なんだっけ?」
「えぇ、明日の朝。 まだ通院は続きますけどね」
「明日かっ。 そうかぁ、それじゃあ明日 話すでもよかったかな。 いやいや、でもせっかく来たんだから今日話さなくちゃね、うん」
「話、って……なんの話ですか?」
冷蔵庫からペットボトルのお茶を出して手渡し、自分用の水を出して飲む。
おじさんはお茶を一口飲んだあとに、もう1つの紙袋を俺に差し出した。
「秋の部屋を片付けていたらね、八峠くん宛の手紙と一緒にコレが置いてあったんだ」
「……秋が、俺に……?」
「そう。 遺言、みたいなものかな」
紙袋の中にあったのは、『八峠さんへ』と書かれた手紙と、数冊の本。
『八峠さんへ』の文字の下には、『もしも俺の身に何か起こったら開けて下さい』と綴られていた。