「幽霊なんて怖くないッ!!」
「雨音さんとイツキさんならそれでもオッケーだろうけど、八峠さんと双葉ちゃんはダメだと思うなぁ」
「うぅ……」
「親を安心させるためにさ、とりあえず入籍しちゃいなよ。 入籍すればあとはやりたい放題っ!! ヒャッホーな生活になるんじゃね?」
……とりあえず入籍とか、やりたい放題とか……なんかすっごくイヤな言い方なんですけど……。
「明日 八峠さんが戻ってくるんだから、色々話してみたら?」
「……色々、って?」
「一緒のベッドで寝ましょうっ!! とか?」
「……ハァ。 氷雨くんに聞いた私が馬鹿だった……」
ため息混じりに見た氷雨くんは、相変わらずニヤニヤと笑っている。
そんな氷雨くんの足に軽く蹴りを入れたあと、もう一度ため息をついてからドアの鍵を開けた。
「……あれ?」
ドアを開いてすぐ、ソレに気がつく。
私の後ろから入ってきた氷雨くんもすぐに気付いたし、氷雨くんの頭に乗っていたオサキは、すぐに室内へと駆け出していた。
「コーヒーの匂い……だよね?」
「あぁ……コーヒーの匂いだよ」
お互いにお互いの顔を見つめ、お互いに同じことを思う。
そして次の瞬間には、私たちはほとんど同じタイミングで靴を脱いで中へと駆けていた。
「オサキっ!!」
氷雨くんがそう言ったのを聞きながら、私は別の人物の名を口にしていた。
「薄暮さんっ!!」
コーヒーの匂いを嗅いだ時、私の頭の中に浮かんだのは 八峠さんのためにコーヒーを入れる薄暮さんの姿だった。