強がりウサギの不器用な恋
「悪いが……今日は特効薬はなしだ。」
「……特効薬って?」
「社員旅行の夜、処方してやったろ? もしかしてもう忘れたのか?」
「……………あ。」
大林くんの悪気の無い追求や話題から逃れるように、旅館の中庭に居た私を海藤さんは追いかけてきて………
そこで今と同じように頭を撫で、それから特効薬だと言ってしてきたのは………キス。
あの時を思い出し、今もされるかもしれないと思うと顔の温度が一気に上昇する。
……いや、『なしだ』と言ったのだから、今日はする気はないのか。
「今日は慰めてくれないんですね。」
たっぷりと冗談色を乗せてそう言えば、隣から盛大な溜め息が返ってきた。
てっきり、あははと笑い飛ばしたりするのかと思ったのに。