強がりウサギの不器用な恋
「んなこと、俺も知らねぇよ。
つーか、大林も西田も! 俺のことを“社長”って呼ぶなってずっと言ってんだろ!」
「いや。宮田さんが“社長”って呼んでんのに、俺たちが“渡辺さん”って呼べないっすよ!」
魔法を使うように、ガラリと話題を変えてくれた社長に心の中で感謝した。
私はこの機を逃がしてはいけないと、トイレを理由に部屋を出る。
この温泉旅館に着いてすぐ、綺麗な中庭があることに気がついていた。
特別行くあてのない私は、自然と足がそこへと向かう。
誰もいない中庭に降り立ち、こじんまりとした木製のフラットなベンチに腰をおろすと深い溜め息が出た。
『自己嫌悪』………今の自分にぴったりな言葉。
こんな自分は大嫌いだ。
お酒の席での酔っ払いの言動を、あっさりとかわす対処もできず。
いつまでもウジウジと。はっきりとしない想いに囚われて。
あんなことくらいで、動揺してどうする。