メランコリック
「だから、俺と結婚しようって話」


今日の俺は変化球で攻めることにした。
一足飛びに関係を深める提案だ。


「意味がわからない。私、誰とも……」


「付き合わなくていいよ。だから、先に家族になろうぜ」


電車の車窓を眺めながら、藤枝は渋い顔だ。
当たり前だろう、こんなむちゃくちゃな提案はない。俺も知っていてやっている。


「家族はいらない」


「いるだろ、家族は。おまえだってじいちゃんばあちゃんに育てられたんだから天涯孤独ってわけじゃない。家族っていいぜ?子ども欲しくない?」


「子どもなんて、愛せるかわからないもの無理」


「愛せるよ。おまえが無理でも、俺が旦那なら」


俺はわざと無神経に言った。

藤枝にとって俺は『幸せな家庭で育った』イメージがあるようだ。それなら、そのままイメージを利用しよう。
その幸せな方向に誘えばいいんだ。
それがけして遠いものじゃないって思わせればいい。

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