メランコリック
何が起こったのかわからない。
ただ、私は背後から殴られたようだ。衝撃で目の前がチカチカした。
危ない、危機的状況だ。
そんなことを考える間もない。
何者かが、私の代わりにドアを開け、前かがみの私の身体を室内に蹴りいれた。

玄関のあがりかまちに転がり、私は暴漢の姿を視認した。


「杉野……さん」


私を見下ろすのは、大阪支社に去ったはずの杉野マネージャーだった。


「ここ数日、遅かったじゃないか」


ドアを後ろ手に閉めて、かつての上司は言った。
痛みに耐え、体勢を立て直そうとする私の肩を、杉野の爪先が蹴倒し、踏みつけた。
私は身体を起こせず、玄関に転がる。踏まれた肩がみしりときしむ。


「なん……なんですか」


「おまえと相良って仲悪そうに見えたけど、付き合ってんだな」


付き合っていない。
しかし、そんな問答に意味があるかわからなかった。

背後から私を襲った理由。
今も私を動けないように拘束する理由。

並々ならぬ悪意を感じた。
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