メランコリック
私の固いその部分に業を煮やした杉野が、自分のズボンのベルトに手をかける。
チャックを下ろし、強行で私の中に侵入しようと、身体を押し付けて体重をかけてきた。

私はその一瞬の隙に間近にある杉野の右耳に噛み付いた。
根元から全力で歯を立てた。
噛み切ってやるくらいの気持ちで。

杉野が鋭い悲鳴をあげ、私の顔面を手のひらで押しのけた。
一瞬杉野の身体が浮く。

1Kのアパートは玄関とほぼ同じ場所にキッチンがある。
私は杉野の身体の下で、流しの扉に手を伸ばす。
包丁があるはずだ。
自衛のためには武器がいる。

しかし、果たせなかった。
杉野の腕が私の頭を、叩きつけるように床に押し付けたからだ。


「よくもやったな、この売女」


憎悪を込めた声で杉野が言った。
右耳から出血している。私の口にも血の味がする。殴られたせいか、杉野の血かはわからない。

殺されるかもしれない。

恐怖と静かな覚悟を感じた。
これほど冷静でいられるとは思わなかった。

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